GALLERY SUGAYA

大仏殿のさくら  


奈良大仏殿のさくら(メゾチント)
大仏殿のさくら May 2009 メゾチント 175mm*130mm

 毎年春になると、歯の定期検診を受けるために大阪へ行っておりますが、今年はそれだけのために往復するのでは汽車賃が勿体ないと考え、一泊して関西の桜を見ることにしました。開花状況やホテルの混み具合などをインターネットで調べ、奈良に泊って奈良市内の寺院と宇治の平等院とを見るという計画を立てました。

 宿泊したのはホテル日航奈良で、50歳以上に適用される「ふらっと50」というシニアプランを申込みました。立派なバス付シングルルームに和洋バイキングの朝食がついて9000円、その上に奈良市内のバス一日乗車券またはビールセットのどちらかを選ぶサービスがつきました。JRの改札口を出てすぐホテルに入ることができるし、駅前からは、市内各所へ向けてバスが発着するので、行動が至極容易でした。

 さて改まったものの言い方になりますが、今回このように日本の古都を訪ねてみる気になったのには、単純に桜を見たかっただけでなく、画を描く上で日本の風物が興味がもてるものなのか一度考えてみたかったという理由もあります。

 そこで私の観光は、興福寺の五重塔をじっくりと眺めることから始まりました。、五重塔を仰ぎ見て、大きな鳥が天空に飛び上っていくようなイメージを持ち、さらに想像をたくましくすればよいのかも知れませんが、塔が建築として完成したスタイルになっているので、それを手掛かりにして創造的作品をものにするのは難しいように思われました。単なるスケッチであれば、そんなことは問題になりませんが。
 次に春日大社へ歩んで、建物の赤と木々の緑の対比の美しさに見惚れましたが、家へ帰ってから写真を並べて見ると、冷たい石灯籠群と建物の赤の対比の方がより美しく、石灯籠を主体とする画を描いたら面白いのではないかと思うようになり、そのような見方で写真を撮って来なかったことを悔んでいます。

 春日大社を出てからは、東大寺二月堂の回廊へ上がって奈良盆地を眺め、正倉院へ廻ってその造形的な美しさに見とれ、大仏殿に至りました。庭にある桜の大樹は八分咲きで、大仏殿を背負って、空いっぱいに広がり、まさに春爛漫でした。大仏殿は、正面からまともに描くより桜の後ろにちらほら見える方が面白いようです。

 午前中で奈良観光は終わり、市中で奈良漬を買ってから電車に乗り、宇治で降りて平等院の繊細な美しさを味わい、宇治茶を買って、また電車に乗りました。京都では予定の新幹線まで時間があったので、三十三間堂をじっくり見てから雲竜を買い求めました。疲れました。

 今月の作品は、先月の油彩作品を銅版画に作り直したものです。油彩作品の方は、さらに筆を加えたいと思っています。(2009年6月)

奈良大仏殿前のさくら(写真)
大仏殿前のさくら
春日神社の灯篭(写真)
春日神社の灯篭