GALLERY SUGAYA

親水公園   


親水公園風景(水彩)
親水公園 January 2012 水彩 315mm*228mm

 四年前に、越してきたこの集合住宅の近所にはウォーキングをする場所がたくさんあります。門を出てまず東方向へ300メートル歩くと、大庭城址公園の石垣にぶつかります。春になると、この公園は、見事な桜を見物する老若男女で賑わいます。石垣の前を左に折れてさらに500メートル坂を下ると、引地川のほとりに出ますが、その両岸1500メートルくらいは親水公園として立派に整備されており、ここの桜並木もまたきれいです。

 親水公園の所々には、葦が茂る湿地帯が残されており、ザリガニや蛙、亀などの水棲動物がが棲みついています。過日、この湿地帯を見渡す場所に立ち、完全に枯れて冬の陽に輝く葦の原を眺めていたら、急に水彩画を描いてみる気になり、翌日、スケッチブックとカメラを持ってまたやってきました。

 この景色は、遠景に丘陵を配し、手前に葦の原っぱが広がる変哲もない構図ですが、ここを描いてみる気になったのは、最近いろいろ研究している水彩画の技術でこの葦原の広がりをどこまで表現できるかという思いが浮かんだからです。

 葦の広がりや灌木の茂みなどは、全面的に洗って柔らかさや明暗を表現し、葦の葉や穂の輝きは、洗った画面が乾く直前にナイフ、ペン、爪楊枝などで引っ掻いて表現しました。また洗った画面が充分に水で濡れているときに引っ掻くと、そこに絵具が溜まって色が濃くなり、陽が当たらず陰になっている葉を表現できることも判りました。

 洗ったり、引っ掻いたり、擦ったり、色々な技術を使って、ある程度期待していた成果があったと思いますが、こんな技術をやたらに使うことは、本来の水彩画のあるべき道から外れるものと非難される可能性が あります。筆を単純に重ねていき、さらっと仕上げるのが一般的な方法なのかも知れません。

藤沢市親水公園
藤沢市親水公園 

 これからは、かなり乱暴な技術を使っても目立たない範囲に止めるか、あるいは目立つように使って新しい表現を目指すか、どちらにするか自分でも判りません。芸術の世界では、してはならないというものはないのですから、どちらでもよいわけですが。
(2012年5月)