GALLERY SUGAYA

かしわばあじさい  


かしわばあじさい(銅版画・メゾチント)
かしわばあじさい August 2007 メゾチント

 このひと月は,制作時間の大半をメゾチントに費やしました。
 鉛筆で描いた下絵により作業を始めましたが、すぐにこの線描風の下絵がメゾチントに適していないように感じ、下絵無視に方針を変えました。実際にはあじさいの小さな花をいくつも重ねて全体の動きを出すようなことを試みたのですが、メゾチント特有の幻想的なイメージが出てきたものの、肝心のかしわばあじさいのダイナミックな感じは得られませんでした。

 そこで花の一つずつを大きくして、その形や向きで構図に動きを与えることにしましたが、既にかなり削り込んでいる画面を全面的に変えることには無理がありました。
 最終的には全面にサンドペーパーをかけて磨き、再度目立てをして、作り直すことにしましたが、それでも最初に削った跡や深く入りすぎた目立てナイフの跡など具合の悪い部分が無数に残っていて、描画作業は難航しました。そこで部分目立てをするためのルーレットや線を掘るためのニードルなど新しい道具類を買い求めて来て、表現の改善に努め、試し刷りは20回にもなりました。この試し刷りは数回程度にするのが一般的なようですが、今回の制作は、色々な道具を使って、色々な表現を試みる練習の意味合いがあったので、止むを得ないと思っています。
 しかしこれだけ苦労した結果、スクレーパーの研ぎ方も巧くなったし、インクの拭き取り方、プレスの調整などの要領もよくなり、全ての作業が速くなりました。また作業に慣れて、インクで手を汚さなくなったことも能率アップにつながっていると思います。途中で投げ出したようなことで終わりましたが、自分としては得るものが多かったように感じています。(2007年9月)