興福寺七重塔
興福寺の五重塔は高さ５０m、この大きさと威圧感を写生風に描いて表現するのは容易ではありません。何らかの工夫が必要です。
苦肉の策として五層の屋根を七層にし、左右の対象を崩すデフォルメをしてみました。初めての材料なのでまず試作の版を作りましたが、それは勢いがあって、まずまずの出来でした。
しかしその後で下絵を描き、色別に４枚の版を丁寧につくった結果は、ご覧のとおりにきれいではありますが、工芸的で迫力がありません。
水彩や油彩で試みてから再挑戦すればうまくいくかも知れません。面白いモチーフなのでもう少し考えてからやってみましょう。
今回使用した版材は、紙繊維を３mm厚に成形した台湾製の材料です。均質で柔らかなので、彫刻刀でさくさくと切れます。いろいろな工具で線を引いたり、引っ掻いたり、あるいは型を押しつけたりして版面にさまざまな表情を作ることも容易です。
使用する油性インクは、サクラ版画用インク、文房堂銅版画インク、プリントゴッコインクなどを使ってみましたが、それぞれ使い勝手が違います。下地を隠すために厚くインクをつける場合は、銅版画インクがよいようです。印刷には銅版画用のロールプレスを使いました。 （2013年10月）