GALLERY SUGAYA

登山電車が行く高台  


ベンゲンからのミューレンの眺め
登山電車が行く高台 April 2003 油彩 F4 332mm*242

 スイスのインターラーケンを出て南へ向かう登山電車は、途中のツヴァイリュッチネンで二つに分かれ、前半分が左側の谷をグリンデルワルトへ、後半分が右側の谷をラウターブルンネンへと進みます。後半分が登るラウターブルンネンタールは非常に深くて長い谷で、その奥には氷河を抱く高峰が連なっています。

 谷底の町ラウターブルンネンで別の登山電車に乗り換えると、谷の東側の断崖を登り、ユングフラウの登山口であるクライネシャイデグへ行くことができますが、その途中に国際的なスキー大会が開催されることで有名なベンゲンという小さな町があります。一昨年の初夏、ここに二週間ほど滞在し、山歩きとスケッチを楽しみました。

 さてこのベンゲンからラウターブルンネンタールの反対側、つまり西側の高台を見たのがこの景色で、右手のグリュッチュアルプから左手のミューレンまで登山電車が走っています。その途中には牧場が広がり、東側の車窓からはユングフラウ、メンヒ、アイガー三山の美しい眺めを楽しむことができます。

 漸く夕闇が迫る夜の9時頃、ベンゲンのシャレー(山小屋風の短期貸家)のベランダに立つと、西側の高台を走る終電車の明かりがよく見えます。インターラーケンへ通勤している地元の人たちだけでしょうか、乗客の姿はまばらです。

 観光案内のような前置きが長くなりました。ほとんど毎日見ていたのでこの景色に愛着を感じ、スケッチとデジカメ写真を参考にして油彩を描き始めたのですが、構図の上で魅力があったわけでなく、大変苦労しました。下の写真でお判りいただけるように真中の山は左右対称で迫力があるとはいえません。どうにもならなくなり、画を壊すつもりで、山を傾け変形させてみました。途端に画面に動きが出て面白くなり、とりあえず仕上げることにしました。 (2003年5月)

ベンゲンからのミューレンの眺め


ベンゲンからのミューレンの眺め
高台の左端、崖縁にこびりついているのがミューレンの町です。ここからリフトを乗り継ぎ、シルトホルン2970mへ行くことができますが、山頂には007の映画の舞台になった回転レストランがあり、観光客で賑わっています。(私はこの映画を見たことはありません)
シルトホルンは中央の山、ビーテンホルンの陰に隠れていて見えません。