GALLERY SUGAYA

ひまわり   


枯れたひまわりの風景・油彩
ひまわり  March 2002   油彩 F4(332mm * 242mm)

 私の部屋のイーゼルには、60号の描きかけが載ってています。実はこのギャラリーの別のページで紹介している4号の作品「ひまわり畑」を大きくしようとして作業を始めたのですが、途中で、小さい作品では筆の勢いだけで表現できたものが、大きい作品ではもっとしっかりした表現技術がないと描ききれないように感じ、そのまま半年ほどが過ぎています。つまり自分の力不足を感じているわけです。

 勿論その間どんな表現が良いのか研究はしています。例えばこの数ヶ月は、クリムトのような装飾的な表現、あるいはブラックのようなキュービズム風の構成などを試みています。
 そんな他人のやり方を真似しないで、もっと独創的な表現に向けて努力すべきであるとおっしゃる方もあるでしょう。しかし現在の平面的な絵画の世界では、可能なことは全て試みられており、いかなる天才をしてもまったく新しい表現方法を案出することは、ほとんど不可能な状況にあると考えた方がよいのではないでしょうか。

枯れたひまわりの風景・油彩
ひまわり Egon Schiele

 現在は、大都市ばかりでなく、地方にも素晴らしい美術館がつぎつぎと誕生し、優れた企画展が開催されています。大きな書店には、美術関係の書籍が山積みされています。テレビでも美術関係の番組が少なくありません。また誰でもその気になれば海外の魅力的な美術館へ行って、ゆっくりと名作を鑑賞することができます。とにかく現在と過去の美術情報が溢れているのですから、表現方法についても、貧弱な自分だけの頭からひねり出すよりも、豊富にある情報の中から自分が本当に欲しいものを見つけ出し取り込む方が自分の技術を高めるのに効果があるはずです。表現技術が豊富になれば、自分が描く画も多彩になり、質も高まります。

 この「ひまわり」は、近所の畠に生えているひまわりをデジカメで撮影し、描きました。最初はクリムトの表現方法を意識していましたが、途中からジャコメティの作品がちらちらと頭の中をよぎるようになりました。絵画でも彫刻でも、人物を押しつぶすように細めていくあの作品です。

 私はジャコメティを研究したことがありませんので、見当はずれの解釈をしているかもしれませんが、ジャコメティは人物を細長くすることによって人物のイメージを凝縮させ、まわりに大きな空間を感じさせる効果を考えているのだと思います。そのように考えると、だれでもこの簡単な手法を取り入れ、凝縮・空間拡大効果を上げることができます。ジャコメティを高く評価する人が多くある一方で軽視する人も少なくないのは、そんなことが理由なのかも知れません。

 私がジャコメティを意識したのは、真中に立つ数本の枯れたひまわりが何となくジャコメティの作品を連想させてくれたからであり、確かにこのひょろ長いひまわりにより、畠の上の広い空間を表現するのにある程度成功しているように思えます。しかし実のところ、私はジャコメティのマンネリ化したあのスタイルが好きでないのです。

 もう少し気の利いた表現方法はないものか。そのように考える私の手許には、どこで買い求めたのか忘れましたが一枚の絵葉書があります。エゴン・シーレが描いた「ひまわり」です。落ち着いた配色でありながら、華やかさ、なまめかしさがあります。こんな表現ができたらよいのにと溜息をついているところであります。(2002年4月)