カランコエ
私は展覧会を見たときに印象に残った作品の絵葉書を買い、それを小さなスケッチブックに貼っておきます。
このスケッチブックの中には花の画も何点かありますが、私が特に好きなのは、金色のバックに黒いシルエットのように浮かんでいる香月泰男の菊と縦長の画面に描かれた靉光の西洋あざみです。どちらも造形的に面白く、力強くて、繊細であります。この力強さと繊細さとは矛盾するようですが、決してそのようなことはありません。実際にこれらの作品をご覧になれば、お判りいただけるでありましょう。
さてこのカランコエは可憐な花ですが、咲き始める頃、まさに膨れようとする力が全体に漲り、その形に引き付けられます。花が咲きそろい、少し間が抜けた頃に描いたからというわけではないでしょうが、なかなかあの絵葉書の名作のようにはまとまりません。 （2001年）