GALLERY SUGAYA

塔のある建物   


ミュンヘンの新市庁舎(水彩)
塔のある建物 July 2004 色鉛筆と不透明水彩 88mm*285mm

 ミュンヒェンの新市庁舎です。
 ゲルマンの素朴な建築に始まるゴシック様式は、富の蓄積と教会の権威の高まりとともに、より高く、より華やかに進化し、ヨーロッパ全体に広まりました。

 第一次世界大戦直前の1909年、この絢爛豪華なネオゴシック様式の建物が完成しましたが、当時のドイツは、ビスマルクによって統一されて間もない頃で、近代工業の発展により、史上最高、世界一の繁栄を続けておりました。

 ヨーロッパの古い街を歩くといろいろな塔が目につきます。それは教会ばかりでなく、城壁の門、美術館や市役所の一部など様々です。塔の用途の第一は、遠くを見ることですが、考えてみるとその他にも多くの目的や機能があります。遠景では、横に広がる野原や町並みのアクセントになるし、近くで見れば、その高さと垂直感は、人々を威圧し、信仰を深めさせます。

 さて当たり前のことではありますが、これらの塔は、皆表情が異なります。しかしどれも時計や飾りのデザイン、窓の大きさや配置、彩色や汚れ、設計者が考えてもいなかった後からの改修工事など、多くの要素を見事に調和させています。このような塔から受けるイメージの基本的な部分は、人種や時代を超えた人類共通のものであるように思います。つまり人種が異なっても、あるいは宗教が異なっても、同じ一つの塔を見る人達が受けるイメージやそれに伴って生じる感情には、共通するところが多いのではないかということです。

 この6月から7月までヨーロッパを旅行して、幾つかのモチーフを見つけましたが、塔もその中の一つです。垂直線の要素に斜線や曲線が組み合わされ、窓などが配置されて、一つの造形物が形作られている状況を意識することによって、人種や宗教が異なっても、すべての人間に共通して受け入れてもらえる面白い作品ができるのではないかというような理屈を、この暑い最中に考えているのです。 これから暫らく縦長の画が続くかもしれません。 (2004年9月)

ミュンヘンの新市庁舎(写真)
新市庁舎
ミュンヘンの新市庁舎前の観光客
新市庁舎前の観光客

 この新市庁舎の主塔には、二段重ねの仕掛け時計があり、毎日11時、12時、さらに夏には17時にも人形の演技が繰り広げられます。もちろん新市庁舎の前のマリエン広場は、人形を見ようと押しかけた観光客で一杯になります。
 なお旧市庁舎は、この近くにあり、一部がおもちゃ博物館として公開されています。