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質的調査

非構造的インタビュー

                    ⇒関連項目 非構造的インタビューとライフストリー

ライフストリー法の前提

非構造的インタビューとしてライフストーリー法を用いる理由、またはライフストーリー法の前提

       2018/0409 白水繁彦

 

ライフストーリー法は以下の、相互に関連する定理を前提にしている。

 

定理1:個人の人生には社会変動が投影している。

 個人史の語り(ライフストーリー)のなかに、マクロな社会変動やミクロな社会変動が隠されている。すなわち、戦争、災害、不況、好況など大事件や時々の状況変化といったマクロな変動、家族、親族、友人、知人、同僚等との関係の変化といったミクロな変動を個人はどうとらえたか、どう対処したか、どのような生き方を学んだか等々が個人史の語りのなかに隠されている。

例:ヘンリー・イサラ:朝鮮戦争時の徴兵に際し州兵の途を選ぶ。NY等米国内の他地域の暮らしを体験。cf.マイク・ホンド:徴兵の際に僻地の学校へ赴任することで兵役を逃れる。エド・クバ:黒人の公民権運動の影響で始まったマイノリティ覚醒運動という社会変動のなかでエドは自らのエスニシティ(ウチナーンチュ)に目覚める。

 

定理2:今日の個人の意識と行動、性格は社会構造のなかで形成されたものである。

個人の現在の行動、考え、意見、信念、イデオロギー、性格等メンタルな部分は、それまでの人生のなかで出会った社会構造(個人や集団の相互関係、制度や組織がもつ社会規範の体系等)のなかで形成されてきものである。だから社会構造における自分史の語りのなかにその成り立ちを解く鍵、手がかりが隠されている。

例:ヘンリー・イサラ:村人会における下染め(無自覚的伝承段階)、県人会における公的リーダー(エドやジョン)やピアグループpeer group(深いつながりの仲間集団:例キヨシや、ショウエイ)との交流のなかでウチナーンチュ・アイデンティティが強められていく。

 

参照文献

白水繁彦(2018)『海外ウチナーンチュ活動家の誕生』御茶の水書房