| ■日本平
雪を伴った春の嵐が過ぎて、この日から晴れる。新幹線から見る白い伊吹山が青空に映える。名古屋、浜松まで快晴である。ところが、晴天時には浜松から見えるはずの富士山がなかなか現れない。静岡に近づくほど山沿いで雲。上空の寒気が抜け切らないためである。ちょっと天気図を見誤った。天気予報は難しい。
静岡駅前でレンタカーを借りて三保の松原に向かう。駿河湾の紺碧の海、風光明媚な海岸線に石垣イチゴのビニールハウスが並ぶ。太陽は眩しいが、三保の松原の波打ち際の向こうは残念な雲。
世界遺産に登録された三保の松原から、絵に描いたような富士景色を見ることができなかった。がっかりして清水魚港に立ち寄った後、日本平の山頂に建つ日本平ホテルに向かう。

ホテルは日本平の有度山東斜面にある。4世紀の始め景行天皇の第2皇子の日本武尊が東征を祈って、三種の神器の一つ草薙の剣をかざしたとされる場所。山続きの久能山には徳川家康を祀る東照宮もある。
ロビーエントランスや部屋のバルコニーから清水港の向こうに富士山が望めた。
「頭を雲の上にだし、四方の山を見下ろして・・」と、童謡の歌詞にある通り、夕陽をほんのり帯びた山頂部が雲の上から覗く幻想的な眺めに出会えた。梅の香りが漂う広い庭園のどこからかウグイスの鳴き声がする。夜は清水市街や清水港の夜景が、きれいに見渡せるワンランク上のホテルである。
翌朝の天気は静岡県だけが意地悪な曇り。昨日と同様に富士の山頂部だけ覗く。
東名高速由比の上り線では真正面に富士、東海道線や国道1号、駿河湾を望むきれいな景色が見られる。
富士山麓に広がる今宮茶畑に向かう。緑の茶畑の背後に白い富士山を頂く有名なスポットである。しかし、雲で覆われている。お茶の葉の色合いも芳しくない。
■鉛色の景色

富士パノラマ道路から時計回りに富士五湖を巡る。鉛色の空であるが、富士山の全容が少しずつ見られるようになってきた。
3日前に降った雪がかなり道路に残っているため本栖湖は入口だけ。精進湖はもっと残雪が多いため回避。西湖では山頂部に登り龍のような珍しい渦巻き雲が、河口湖では小さな傘雲が見られた。
この日の宿は河口湖畔の秀峰閣湖月。河口湖に多くあるホテル、旅館の中で、障害物に遮られることなく富士山と河口湖が目の前でダイナミックに見られる数少ない宿のひとつ。
どの部屋、風呂、波打ちぎわの庭園からも富士山を真正面に仰ぐ、時に湖面の逆さ富士や月が映る。妻は部屋の足湯に入っていつまでも眺め続けている。
■快晴 富士景色
翌日の天気予報は快晴。期待を込めて床についたが翌朝少し寝過ごした。紅富士はピークを過ぎて薄紅色になりかけていた。湖面に逆さ富士が映るが、船や水鳥が湖面を行きかうさざ波で逆さ富士は乱される。

ゆっくり朝食を済ませて忍野八海に向かう。テレビなどでは観ているが、2人とも始めての場所。
富士山の雪解け水が伏水となって忍野湖を形成。その後、湖が干し上がって8か所の泉が残った。これが忍野八海。何年もの歳月を経て濾過された透明な湧き水で満たされている。
中国の観光客が多い場所と聞いていたが、観光バスで大挙して来た彼らの騒動しさに耐えられない。
彼らが居ない静かな旧渡辺家の榛の木(ハンノキ)民族資料館に退避する。忍野八海の私有地。広大な庭園、富士山の伏水が湧く澄んだ池。18世紀に建てられた忍野最古の茅葺家屋、水車小屋など昔の暮らしぶりが分かる。展望所からは絵に描いたような富士景色、まるで江戸時代にタイムスリップしたよう。

富士五湖のラストは山中湖を見下ろすパノラマ台を目指す。小さな展望台であるが富士と山中湖のワイドな眺めがよい。それに湖の向こうに白い南アルプスの山並みが連なり、青空に映えて美しい。
ここから見る富士の山容は今までとは違って、左右に少し盛り上がった斜面になる。
北西斜面は貞観噴火(平安時代初期)で隆起した小山。南東斜面は宝永の噴火跡(江戸時代中期)とその寄生山が何段かに盛り上がった。
この時、流れ出した溶岩流で精進湖や西湖、青木ヶ原樹海が形成された。宝永噴火は南海東海トラフトを震源とする宝永地震(M8.6)が発生した後に噴火、関東一帯は火山灰で埋まったと伝わる。南海東海トラフト地震の誘発で再び噴火するのではないかと懸念されている。

レンタカーを返却する三島駅まで残り2時間程。山梨県から御殿場、裾野を経て富士登り口に向かう。
宝永噴火口が最も間近に見られ、富士サファリなどがあるが、先日の積雪で通行規制されている。ノーマルタイヤのため断念、望遠レンズで宝永の噴火跡を撮るだけになった。
■富士山の見える宿
今回は雪を被る富士景色をゆっくり眺められる宿に拘った。天候だけがドンピシャリとはならなかったが、日本平ホテルから風光明媚場な清水湾と富士景色のワイドな遠景は絵画のよう。河口湖秀峰閣では目の前に雄大な富士が迫り、部屋から、足湯から、露天風呂などからゆっくり富士景色を堪能、至福の時を過ごす。

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