
−歴史探訪−

毎日新聞で「地震学の現在」が連載されている。阪神大震災を経験してから地震に強い関心
を持つようになった。その後、東日本大震災や身近で大阪北部地震が発生した。
異変種コロナ拡大による緊急事態で巣ごもり中に、過去の巨大地震や津波を時系列的に摘出
地震予知の現状などについて独自にまとめてみた。 <2021年5月、2024年1月追記>
| 発生年 |
名 称 |
震 源 地 |
強度(M) |
補 足 |
| 430(頃) |
|
三陸沖 |
9級 |
堆積痕跡 |
| 599 |
推古地震 |
奈良 |
7 |
日本書記で初記載の地震 |
| 684 |
白鳳地震 |
南海・東南海・東海(同時) |
8以上 |
日本書記記載、新島出現 |
| 869 |
貞感地震 |
三陸沖 |
9級 |
内陸部に津波痕跡など |
| 887 |
仁和地震 |
南海・東南海・東海(同時) |
8−8.5 |
|
| 1096(12月) |
永長地震 |
東海 |
8−8.5 |
死者1万人以上 |
| 1099(2月) |
康和地震 |
南海(連動) |
8 |
2年前の永長東海地震に連動 |
| 1293 |
鎌倉地震 |
相模湾 |
8 |
死者2万人以上 |
| 1361 |
正平地震 |
東・南海 |
8−8.5 |
|
| 1454 |
享徳 |
三陸沖 |
8.4 |
|
| 1498 |
明応地震 |
南海・東南海・東海(連動) |
8以上 |
死者3〜4万人、鎌倉大仏殿流失 |
| 1596 |
慶長伏見地震 |
淡路・有馬・高槻 |
7.5 |
5日以内に豊後地震、伊予地震 |
| 1605 |
慶長地震 |
南海・東南海・東海(同時) |
8 |
死者1〜2万人 |
| 1611 |
慶長三陸地震 |
三陸沖 |
8−8.5 |
|
| 17世紀初頭 |
千島海溝地震 |
千島海溝・十勝沖 |
8.8 |
|
| 1703 |
元禄関東地震 |
相模湾・房総沖 |
8.2 |
死者7000人 |
| 1707 |
宝永地震 |
南海・東南海・東海(同時) |
8.5 |
死者2万人、49日後,富士山大噴火 |
| 1771 |
八重山地震 |
八重山沖 |
8 |
津波85m(日本記録)、死者1.5万人 |
| 1793 |
寛政地震 |
三陸沖 |
8−8.5 |
|
| 1854 |
安政地震 |
南海・東南海・東海(連動) |
8.6-8.7 |
1日後に南海地震、死者3万人 |
| 1891(M24) |
濃尾地震 |
岐阜(根尾) |
8 |
死・不明者7270人 |
| 1896(M29) |
明治三陸地震 |
三陸沖 |
8.2 |
死・不明者21960人 |
| 1923(T11) |
関東大震災 |
相模湾・関東平野 |
7.9 |
死・不明者10.5万人(推定) |
| 1944(S19) |
東南海地震 |
東南海 |
8 |
死者2600人(戦事下報道規制) |
| 1946(S21) |
南海地震 |
南海(東南海に連動) |
8.4 |
死者1440人 |
| 1993(H5) |
奥尻島地震 |
北海道沖 |
7.8 |
死・不明者230人 、津波30.6m |
| 1995(H5) |
阪神淡路大震災 |
淡路・阪神 |
7.3 |
死・不明者6500人 |
| 2011(H23) |
東日本大震災 |
三陸沖 |
9 |
死・不明者23850人 |
| 2016(H28) |
熊本地震 |
熊本・阿蘇 |
7.3 |
死・不明者270人 |
| 2018(H30) |
大阪北部地震 |
北摂 |
6.1 |
死者6人 |
| 2024(R6) |
能登半島地震 |
能登半島 |
7.6 |
死者233人 |
過去に発生したM6以上の地震を調べたが多すぎるため、M8以上の巨大地震を目安にピックアップした。それでも記載しきれないため、話題性や身近な地震に絞り込んで時系列的に上記した。
日本列島では北米プレートとユーラシアプレートに、フイリピン海プレートと太平洋プレートが潜り込む地球の地殻変動によって、以下の4タイプの地震がおきる。
| ◆プレート型地震 |
日本海溝(三陸沖)や千島海溝の深海で発生。
日本海溝ではM9の巨大地震が3度も発生、千島海溝でもM8.8が発生している。 |
| ◆トラフ型地震 |
海溝よりも少し傾斜の緩い駿河湾から四国沖にかけて発生。
南海・東南海・東海沖のブロックが同時に動くとM8.5〜9クラスになる。 |
| ◆活断層型地震 |
260万年前から以後に活動した形跡のある断層で発生。
中央構造線、糸魚川−静岡構造線など、わかっているだけで2千以上ある。 |
| ◆火山活動型地震 |
火山のマグマ活動によって発生する。 |
中でも特に注目されているプレート型の三陸地震と、トラフ型の南海・東南海・東海地震について予知と防災論争が行われている。

<日本列島の活断層分布>
◇プレート型 三陸沖地震
−東日本大震災は想定外ではない−
2011年3月にM9の東日本大震災が発生した。この時、国の地震調査最高機関である地震調査委員会は予測しなかったこと認めた。地元の自治体や住民も、過去に三陸各地で何度も起きた巨大地震や、津波の痕跡を示す石碑などかあることを、いつの間にか忘れてしまっていた。
ピックアップした三陸沖で発生した代表的な7件の地震は、一時期を除いてほぼ100〜500年前後で繰り返していることがわかる。しかし、地震調査委員会では三陸沖を6ブロックに分割、全が一挙に動くのはまれで、各ブロックでM6〜8の地震が500〜800年間隔で発生との見解でしかなかった。
三陸沖で起きた430年頃と869年(貞感地震)の2度のM9級巨大地震が何故見落とされたのか。
特に、貞感地震では津波が内陸部まできたことを示す、堆積物の調査結果を産業技術総合研究所(以下総産研)が発表している。地震調査委員会の地質調査部会では「M9級の巨大地震による大津波がいつ起きてもおかしくない」と問題提起していた。その議事録もあるが、何故か一般には公表されなかった。
貞感地震の再来を地震調査委員会に迫った総産研宍倉G長は、東日本大震災の発生直後、「貞感地震の再来、巨大津波が来る!」と叫んだと言われている。しかし、すでに遅かった。
地震学の主流は地震物理学で、地震地質学や地震考古学、地震古文書学などは傍流とされ重視されなかったり、原子力発電所を推進したい電力会社、経済産業省の関係者らは警告を無視した。
阪神淡路大震災の後、総合技術研究所で偶然、総産研地震地質考古学者 寒川研究員の発表を聞いて、三陸沿岸部の遺跡、土壌堆積物などの分析から過去にM9級の巨大地震と津波があったことを知った。この時から、「東日本大震災は想定外」を連発する関係者の姿勢に強い不信感を持つようになった。
◇トラスト型 東南海・南海・東海地震
−二つの地震予知モデル論議−
上表から南海・東南海・東海地震の発生間隔は、ほぼ100〜150年(11と12世紀の発生は不明)。
ここで気になるのは、東海地震は1854年の安政地震(南海・東南海・東海がほぼ同時発生)から167年間も発生していない。これが東海地震が近いとされる根拠となっている。
一方、東南海地震は1994年に続いて、1946年に南海地震が連動発生しているからもう少し先になると考えられるが、いつ起きても不思議ではない東海地震に引っ張られて、連鎖的に起きるかも知れない。

一流の地震物理学者であっても地震発生のメカニズムは複雑で地震予知し難い。
そため、過去の地震発生間隔から「単純平均予測」で、南海・東南海・東海地震の30年以内の発生確率を10〜30%と公表されてきた。
ところが、東日本大震災後にこの確率が60〜70%に引き上げられた。
その根拠は地震物理学者の権威で、島崎東大教授名誉教授(*)が発表した「歪量・時間予測」方式が評価されたためである。南海トラフト地震による高知県室戸岬の「地殻隆起量」と「地震発生間隔」との関係から、次の地震発生を予測する世界的にも注目された予測モデルとされている。
ただ、室戸岬の1点観測だけで決めるのは危険との意見も多く大論争になったが、東日本大震災を予測できなかったため強く否定しきれず、これまでの「単純平均予測」と「隆起量・時間予測」方式の両論併記で答申された。
答申を受けた政府の政策委員会や防災関係者は東日本大震災の反省から、最悪事態の備えと切迫感を高めるために発生確率が60〜70%と高い「隆起量・時間予測」方式を打ち出した。
規模についても数千年、数万年レベルのM9.1に引き上げられた。プレート型の三陸沖地震ではM9は起きたが、トラフ型の南海・東南海・東海地震ではまだそこまで確認されていないが、想定外をなくすことが優先された。
その結果、内閣府資料の津波高さは高知県で34m、伊豆半島下田で33m、和歌山県20mとなった。大阪でも大阪湾から遡上する津波で大阪市の半分と地下街も浸水するとして、これに基づいた地震・津波対策が行われようとしている。
◇矛盾する想定策
東日本大震災の反省から当時の民主党政権は想定外をなくすために、考えられる最大地震を基に予知防災する方向に舵を切った。
ところが、その後、自公政権に変わって過度な最大想定に対する批判と、内閣府の政策的な思惑から見直されるようになった。地震発生確率が高いとされている千島海溝地震は時期尚早として見送り。関東地震については過去の地震規模より低く予測された。人口密度が高い首都圏で最大規模クラスとした場合の被災規模があまりにも巨大すぎることや、東京オリンピックや原発の再稼働に不安を与えないように、M8.7からM7.3に大幅に下げられ、地震エネルギー規模は一挙(1/30)になった。この様な過少評価は、東日本大震災の過ちを再び繰り返しかねない。
◇大津波の対策を邪魔した男たち
地震学者で地震予知連絡会会長、原子力規制委員会委員長代理などを勤める島崎東大教授名誉教授(*)は、著書「3.11大津波の対策を邪魔した男たち」の中で、東日本大震災による大津波は2002年に警告をしていたにもかかわず、東電原子力発電所や経済産業省、その御用学者達によって対策が骨抜きにされた。そのために起きた人災であり決して想定外ではないことを、科学誌の中で時系的に発表している。
◇防災対策の縦割り弊害
阪神淡路大震災(1995年)をきっかに、国の特別機関として総理府に地震本部(地震調査研究推進本部)が設立された。現在は文部科学省に管轄され、有識者らで作る下部組織で地震の発生確立や長期評価している。
一方、地震や津波を起こす活断層の調査は国土交通省が管轄。防災対策は内閣府。さらに「中央防災会議」は内閣総理大臣など複雑で縦割りのため、各自治体によって対応の一貫性を欠く結果となっている。
◇世界の地震ランキング
この際に世界の地震を調べた。その結果、東日本大震災は世界ランキング4位となることがわかった。死者・行方不明者最大のインドネシアスマトラ島沖地震M9.1(注)はM9.3との説もある。
| ランキング |
強度(M) |
発 生 場 所 |
発生年 |
補 足 |
| 1 |
9.5 |
チリ地震 |
1960 |
南太平洋 |
| 2 |
9.2 |
アラスカ地震(アメリカ) |
1964 |
アラスカ湾 |
| 3 |
9.1(注) |
スマトラ島沖地震(インドネシア) |
2004 |
死・不明者23万人 |
| 4 |
9 |
カムチャツカ地震(ロシア) |
1952 |
東日本大震災と同じ強度 |
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